立命館大学での講演(その4-大切にしたいこと PART3)

 大切にしたいこと(PART3)

6.人を育てる、自分を育てる

(1)「教える人」から「一緒に学ぶ人」へ

教師と生徒は、「知っている人―知らない人」、「教える人―習う人」ではなく、対等な関係です。共に学び、成長します。教師は生徒と一緒に生き方を模索します。

(2)「言葉」ではなく「生き方」から学ぶ

子どもは、「言葉」ではなく、「生き方」から学びます。教員や親は、「知識」でなく「経験」で教育します

(3)未熟さを隠さない、成長する姿を示す

教師は、知っていること、理解していることを教えるだけではありません。知らないこと、理解していないことを伝え、生徒と一緒に考えます。教師の学ぶ姿勢が、生徒にとって最高の教えです

完璧になろう、強くなろうとしなくていいです。悩み、葛藤、つまずき、挫折、弱さは隠さなくていいです。未熟さを抱えながら成長する姿が魅力です。

(4)「内」(思い)と「外」(言葉・態度)の一致

正論「こうあるべき」ではなく、実感「こう感じる、こう思う」を伝えてください。子どもに対して「素の自分」で接してください。内にある思いと、外に表れる言葉や態度が一致していることが大切です。不一致だと、子どもは信用しません。

(5)「学校人」(組織人)ではなく、「社会人」(個人)になる

教育の目的は「社会人」を育てることです。そのためには、教師が「社会人」になる必要があります。教師の社会性が、生徒の社会性を育てます。

ところが、教師が学校という狭い世界しか知らないと、社会への興味や関心を生徒から引き出すことはできません。逆に、狭い世界に子どもを押し込めます。「教育」ではなく、「飼育」になります

教師は、自分の世界をもつことが許される職業です。それを生徒に押しつけるのではありませんが、それがないと、生徒は自分の世界をつくりにくいです。

教師は「社会へのナビゲーター」です。そのために教師が社会人であるかどうかが問われます。教師が社会の一員と感じているか、社会にどのように向き合っているか、どのような課題意識をもっているかが問われます。

(6)もっとも大切な教材は「自分自身」

「自分の生き方」が最高の教材です。料理に例えると、「教材、知識、理論」は食材、「教師の人生」が調味料です

(7)たくさん悩んだ人は人の気持ちがよくわかる

たくさん悩んだ人は、人の気持ちがよくわかります。言葉に説得力があります。悩むことが少なかった人は、悩んだ人の話を聞きましょう。

(8)人を育てようとして、自分が育つ。自分を育てると、人が育つ

僕はブラジルの貧しい地域での自立支援活動、中学高校での教育活動を経て、臨床心理士として働いています。子育てもしてきました。

どれも「人を育てる」仕事ですが、「人を育てようとして自分が育てられる」、「自分が育つことで人が育つ」のを実感してきました

僕は、自己肯定感が低く、「自分がダメだ」という思いが強かったです。自分を肯定したくて、いろんなことをやったのですが、何をやっても達成感がなく、しんどかったです。

それが、7年前ぐらいでしょうか。重かった僕の心が晴れました。僕の中から、自己否定感が消えたのでした。心が軽くなりました。それから、臨床心理士になって、人の心を楽にする仕事をしたいと思いました。

次回は、講演を聴いた学生の感想を紹介します。