立命館大学での講演(その3-大切にしたいこと PART2)

大切にしたいこと(PART2)

3.変化の可能性を信じる

この絵を見て、どんなことを感じますか?

インド象は、子どもの頃から鉄の杭につながれています。すると、大きくなって、木の杭につながれても動こうとしません。動けないと思っているからです。

象の横にいる人は、鎖で重しにつながれています。「self imposed limitation」と書かれています。

この人は動けないと諦めています。でも、自分で限界を決めているんですね。動こうと思えば動けるんです

(1)無力感が充満
今、「自分は何もできない」「世の中は変わらない」と諦めている人が多いです。

長年、アジアを中心に各国で保健分野の支援活動をしてきた人に、学校で生徒に話してもらったとき、生徒から次の質問が出ました。
「何年も社会を良くするために働いてきて、社会は良くなりましたか?」。

この質問をした生徒の中にあるのは、「あなたは長年働いてきたけど、社会は良くならなかったでしょう」という疑いです。多くの人が、同じ思いをもっています。

講師は、「そうだね。悪くなったかもしれない。でも、僕はやる。行動した方が楽しいから」と答えました。この回答に、生徒が感銘を受けたのを覚えています。

(2)諦めのチャンネル」から「希望のチャンネル」へ

「できるかどうか」を議論したり評論するのではなく、「変えるために何ができるか」を考え、行動する子どもを育てたいです。

自分に対しても、社会に対しても、「変えたい」と望む子どもを育てたいです。

「あきらめのチャンネル」を「希望のチャンネル」に替えたいです。

(3)大人の「生き方」を見て、希望を感じる

何かしようとするとき、やりたいことを妨げるものはたくさんあります。できない理由はいくらでもあります。

やりたいの?諦めるの? 自分1人なら諦めて生きるのも良いでしょう。でも、生徒や子どもに、諦めが伝わります。教師や親の生き方は、子どもに影響します

4.目標(理想)をもつ
 
(1)こんな世界にしたい、こんな人を育てたい

子どもに、何を感じてほしいか、何に気づいてほしいか、何を学んでほしいか。そのために、何をするか。

教育には、目標、理想、ビジョンが必要です。「こんな世界にしたい」、「こんな人を育てたい」。

設計図なしに物が作れないように、理想(目標)なしに教育はできません。メッセージがないと伝わりません。

人間教育では、教師自身の体験や問題意識が大切です。これなしにいろいろ語っても、伝わりません。

教師の悩みや探求が「教材の隠し味」になります。

(2)「できない理由」ではなく、「できる可能性」を探す

個人の理想は、組織の中で実現します。自分の考えが組織と異なると、摩擦が起きますが、自分は磨かれます。

たとえ自分の理想に反する状況に置かれても、自分の中の火は燃やし続けたいです。

自分のやりたいことをやらせてくれる状況が、いつも用意されているとは限りません。

すぐにできなくても、自分の理想に向かって諦めずに、やれることを探し続けたいです。

5.元気の出る教育
    
(1)「現実」と「理想」

理想を語るだけでも不十分、現実を示すだけでも不十分だと思います。現実を見ることと、理想を探すことの両方が必要です。

社会に希望を持っていない生徒に現実を伝えると、やる気を失ってしまいます。

理想ばかり語ると、嘘くさく聞こえます。

教師や親が、理想に反した現実を見据えながら、希望を持ち続けることが大切です。

(2)「義務感」ではなく「意欲」を高める

子どもに対して「こうすべき」と、義務感を植え付けることが多いです。

義務感だけでは、やる気は起きません。「こうしたい」という意欲を高めたいです。

そのためには、親や教師が意欲をもって取り組んでいる必要があります。

次回に続く。