子どもが思い通りにならないとき、親は知らず知らずのうちに、いろんな手を使って、子どもを従わせようとします。
例えば、
●力を行使する―叱る、命令する、説教する、罰を与える、叩く
●弱者を演じる―責める(どうして私を困らせるの、苦しめるの)、泣く、心身の症状を訴える
●突き放す―投げやりな発言をする、嫌味や皮肉を言う、捨てぜりふを言う(好きにしなさい)
●取引きをする―交換条件を出す(成績があがったら○○を買ってあげる)、褒める
どの方法を使うとしても、親は自分の不満やイライラを解消するために、子どもを従わせようとしています。子どものことより、自分の気持ちを優先しています。
そうすると、子どもは自分の思いを無視されたり否定されたりして、傷つきます。
褒めてはいけないの?
「褒めて育てる」という言葉がありますが、「褒める」ことには大きなリスクが潜んでいます。
あるおじいさんが、滑り台を滑り降りてきた子どもに、ニコニコしながら「じょうず」と声をかけました。おじいさんの喜びや感動、驚きが子どもにとてもよく伝わっていました。
それと違って、気持ちがほとんど込められずに、ただ「よくやったね」という言葉をかけていることがあります。
「上手にできたね」、「よくできたね」という言葉に力があるのではありません。言葉の奥にある思いに力があるのです。
口先では褒めていても、心の中に「それだけしかできなかったのか」「もっとできるんじゃないか」「次はもっと大きな成果をあげてほしい」というような思いがあると、子どもは親の落胆や要求、非難を感じます。
親が子どものことを心から認めている場合は、褒め言葉は肯定的なメッセージとして伝わります。
しかし、そうではなく、親がむしろ自分の欲求をかなえるために子どもを褒めている場合は、褒め言葉は否定的なメッセージにすらなります。
そもそも、子どもは親に無条件に受け容れられていると感じるなら、褒め言葉を必要としないのかもしれません。