最近、2人の女性から、子どものとき母親からお灸を据えられた話を聞きました。
恵子さん:
「おいた(いたずら)をしたので、母が私にお灸を据えました。母も、私と同じ箇所にお灸を据えていました。子どもだけに痛い目に遭わせるのは不憫だったのでしょう。幼いときの強烈な思い出です。自分のせいで母を痛い目にあわせた。“おかあちゃん熱い! 悪かった。二度としません”と思いました」
優子さん:
「よくお灸を据えられました。私はいじっぱりだったから、“お灸ぐらいで負けるもんか。据えるもんなら据えてみろ”と思って、熱いのを我慢しました。効果はなかったです。お母さんはヒステリックなところがあって、自分の感情を子どもに吐き出していたようです」
昔のお灸は、今の「せんねん灸」のような間接灸ではなく、モグサを使った本格的なお灸です。
家庭で手軽にできる健康法として普及していました。癇癪や夜泣きの激しい子どもにお灸を据えることもありました。
2人とも同じようにお灸を据えられたんですが、子どもと母親の様子がずいぶん違います。
恵子さんの母親はとても冷静です。恵子さん は反感を抱かず、むしろ母親のことを気遣っています。
優子さんの母親は、感情にまかせて、お灸を据えています。優子さんは激しく反発しています。
2人とも、母親の様子をとてもよく観察していて、そのときの気持ちを、何十年も経った今でもよく覚えています。
子どもの言動に親が反応するとき、怒りや落胆などの感情をぶつけることがあります。
すると、子どもは感情に抵抗するのが精一杯で、親の思いを理解することができません。
優子さんのように反発できるならまだしも、不満を心の中に溜め込み、「自分は悪い子だ」と思いこむ場合もあります。
親が子どもの言動に反応するとき、自分の感情を混ぜないことが大切です。
例えば、子どもが嘘をついたとき、「どうして嘘をついたの」と怒るのではなく、「○○ちゃん、○○と嘘をついたね。お母さんはがっかりしたよ」と、子どもの行動と自分の感情を分けて話すとよいです。
感情にまかせて発言しないことがとても大切です。
*名前は仮名です。