ある女性が話してくれました。
高校生の頃、やってもやってもだめで、悶々としていて、「どうしよう。こんな成績で」と、落ち込んでいると、
父が、「ちょっとずつ良くなっているから、いいよ」とさりげなく言ってくれた。
「だんだん向上している。そこがいいねぇ」。
そうか! 悪いなりに、良くなっていたんだ。
自分はそこに気がついていなかった。
救われた。
今は「自分はちょっとずつ良くなる人間だ」と思えるようになった。
…と。
僕にも、大切な“ひとこと”があります。
大学時代のことです。
勉強にも生活にもやる気が出なくて、乱れた生活を送っている僕に、
恩師が「おまえは大器晩成だ」と言ってくれました
今思うと、そんな僕によく「大器晩成」だなんて言えたなあと、不思議に思います。
でも、僕は無意識のうちに、
「自分はいつか晩成する」と信じるようになりました。
「肯定する言葉」。これがとても大事なんですね。
自信を失っているとき、「自分はダメ」という感じが強いので、
自分を否定的に見てしまいます。
変化の可能性が信じられなくなります。
下からだんだんに上がってくるときには、
自分にはその変化が実感できなくて、
「何も変わってない」という気がするんですね。
そんなとき、「向上している」「大器晩成」という“ひとこと”が、
乾いた心に、潤いをもたらします。
「私は良くなる」「晩成する」という思いが生まれます。
自分を肯定的に見始めます。
なにげなく発したひとことが、何年経っても、大きな力を持ち続けます。
父親の“ひとこと”、恩師の“ひとこと”、どちらも、本心から出た言葉です。
子どもの成長の兆しを見つけて、さりげなく言葉にしているのです。
さりげないからこそ、自信をなくしている子どもの心に響いたのです。
子どもであっても、大人であっても、
相手の「いいところ」を見つけて、
さりげなく一押ししてあげると、心に生気が吹き込まれます。