発達障害の診断で、医師からグレーゾーンと言われることがあります。
グレーゾーンと言われて、発達上の課題が何かあると捉え、子どもをよく観察して何ができるか考えようとする親御さんもおられます。
これに対して、グレーゾーンという言葉にショックを受け、将来どうなるんだろうと強い不安や焦りを感じる親御さんもおられます。
そこで、不安を抱えきれないで現実から目をそらそうとする人もいます。
遅れは少ないのでいずれ解消されるだろうと考える人もいます。
この場合、後になって、発達の遅れが顕著になったとき、「グレーゾーンと言われたのにどうして?」という疑問が起こってきます。
発達の遅れを取り戻そうと焦り、子どもに過度な努力を要求する人もいます。
この場合、子どもに過度な負担がかかり、後々二次的な問題が発生します。
グレーゾーンというのは、発達障害の特徴を部分的に示していますが、典型的ではないということを意味しています。
ところが、発達障害の診断を恐れていると、グレーゾーンと言われて、「発達障害ではない」と安堵したり、確定されないことに不安を感じたりします。
いずれの場合も、「発達障害か否か」という黒白思考に陥っているのではないかと思います。
発達にはいろいろな側面があるので、発達障害の線引きをするのはとても難しいことです。
だから、グレーゾーンという表現がされます。
子どもは、発達障害があろうがなかろうが、年齢とともに発達していきます。
例えば、7歳のときに同じようにグレーゾーンと言われても、その後、どのような発達をするかは、子どもによって大きく異なります。
「発達障害かどうか」だけを気にするのではなく、「どのような発達上の課題があるのか」をよく理解する必要があります。
発達障害に関して黒白思考に陥りやすい原因として、社会に存在する「成果主義」が影響していると思います。
勉強においても仕事においても高い能力や成果が求められる傾向があります。
勉強や仕事で成果を上げないと、価値がない、社会で生きていけないという思いをいだきやすいです。
親がこのような考えを持っていると、子どもの能力をそのまま受け容れることができなくなります。
そうすると、子どもは「今のままでは自分は受け容れられない」という思いになります。
「自分はダメだ」という思いが強くなります。
障害の有無にかかわらず、生きにくさの根底にあるのは、「自分はダメだ」「自分には価値がない」「自分は嫌われている」と感じることです。
親が、発達障害の診断に、ショックや不安、焦りを感じることによって、子どもの中に自分に対する否定的な思いが生じます。
「発達障害」「グレーゾーン」「定型発達」という分類を気にしすぎることなく、子どもの発達の課題を見つけて、手助けすることができればいいですね。